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  2011 年 4 月 21 日

内閣総理大臣
菅 直人 殿

日本原水爆被害者団体協議会
代表委員 坪井  直 代表委員
谷口 稜曄
事務局長 田中 熙巳

東日本大震災、原発事故災害にあたっての要請書

人類史上未曾有の原爆の被害をうけた私たち原爆被害者は、政府、東京電
力が震災と原発事故災害の復旧と被災者救援のため努力されていることに大
きな期待をかけています。
しかし、稀に見る大地震、大津波、原発事故という同時 3 大災害とはいえ、
当面の対対 だけに気をとられて、全体的な施策が後れをとり重要なことに空
白ができてきていることを、私たちは自分たちの対 験から憂うるものです。
私たち原爆被害者は、 66 年前の私たち自身の被爆体験とその後のいのち、
からだ、こころ、くらしの全面にわたる惨苦を今なお抱え続け、被爆者援護
にかかわる要求運動の実践を重ねてきたものとして、この度の被災者に対し
て必要な施策を緊急に実施していただきたいと思っています。
私たちの体験をもとに、以下の提案をいたします。
政府、東京電力が、これを真摯に受け止めて、実行に移されることを要請
します。

1.地震、津波、放射線漏れによる被災者、避難者に、もれなく罹災証
明・被災証明を発行すること

原爆被爆の時には、警察官も含めて官庁が罹災証明書を出すのに懸命でし
た。罹災証明書は、その後被爆者としての確認に極めて有効でした。
時間が経つと被災者の分散が拡大して、被害の確認作業が困難になります。
このたびの証明書には、被災状況(行方不明者も含めて)や被災後の動き
などの記入欄を設けてください。
政府には、手厚い救済策、復興策を実施されることと期待しますが、全体
的な被害状況の把握の前提として、この初動措置に全力を上げられるよう要
請します。

2.福島原発の事故による被害者には、もれなく健康管理手帳を交付し 、
年 1 回以上の定期 対 診を国の責任で行なうこと
 
私たち被爆者は、 66 年過ぎた今も苦しんでいます。
放射性降下物による放射能障害は、短時日のうちに発症するのはまれで、
相当の期日後に発症することがほとんどです。政府と東京電力は、被害者の
生涯にわたる定期対 診、医療対 策など、事後の対 策に責任を負わなければな
りません。
また、東京電力の命を受けて、原発内でいのちをかけて働くすべての従事
者にも健康管理手帳を発行するよう求めます。
政府、東京電力は、周辺地区の避難勧告や自主避難勧告を受けた人々に対
して万全の対策をとる責任があります。最悪の事態を想定して対策を立てる
べきです。

3.被災者の暮らしと医療の見通しができるまで、被災者が身を置いて
いる避難所を閉鎖しないこと。また、震災孤児 対策を立てること

 先の大戦で、多くの原爆孤児、戦災孤児が路頭に迷ったのを見てきた私た
ちは、このたびの大災害により孤児が生み出されていることを憂えています 。
子どもらへの施策に特段の対 討と配慮を要請します。

4.放射線被害について正確な情報を提供し、国民の不安を取り除くと
ともに風評被害や被災者に 対する差別をなくすこと

5.エネルギー、電力政策を、原子力依存型から、再生可能エネルギー
の研究、開発、利用に大転換すること

当面、今ある原子力発電所については、原子力平和利用の三原則(自主、
民主、公開)を守って、最悪の事態を想定するとともに、最善の安全策を講
じることを求めます。

6 . この たび の原 発事 故の 深刻 さに 学び 、 核 兵器 の 廃絶 を すす める こ
と。軍事的 対応 によって日本の安全を守るという発想をやめ、憲法第
9条に則り、人類共存をめざす外交最優先の平和・安全政策に転換す
ること

7 . 東京 電力 は、 原発 事故 の責 任を 全面 的に 負い 、 与 えた 損害 への 補
償をすること 

  *この文書は、内閣総理大臣、経済産業大臣、厚生労働大臣、文部科学大臣、東
京電力宛に提出します。

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